離婚に際して親権者または監護者にならなかった親が、子どもと面会したり文通することを面接交渉と言い、その権利を面接交渉権と言います。
この面接交渉権は、民法などの法律に明文で規定された権利ではありませんが、判例や家庭裁判所の実務において認められています。
別居中の子どもに会う権利は当然あります。
多いケースとしては、離婚の話し合いがこじれたまま妻が子どもを連れて実家へ帰ってしまっているとき、妻が夫に子どもをあわせないようにしているといった場合は、離婚成立の前後を問わず、夫は家庭裁判所に面接交渉の申立をすることができます。
面接交渉の可否は、子どもの利益、子どもの福祉に合致するか否かを基準に決められます。親と会うことが子どもに悪影響を及ぼすような場合には、面接交渉権が制限されます。
たとえば、親権者ではない親が、親権者である親との事前の合意を無視して勝手に子どもと会おうとする場合や、子どもと会った際に子どもの意思を無視して連れ去ろうとする場合は、面接交渉権の制限を家庭裁判所に申し立てることができます。
具体的には、子どもがある年齢に達するまで面接を禁止したり、親権者または監護者同伴の場合のみ面接を認めるなどの制限が考えられます。
子どもの面接の際に復縁を迫ったり、金銭の無心を言ったりするような場合には、面接交渉権の濫用として、面接交渉権の停止を家庭裁判所に申し立てることができます。
1.親権喪失事由(著しい不行跡)がある場合など、親権者として失格とみなされる場合は、面接交渉権も制限されます。
2.支払能力があるにもかかわらず養育費を負担しない親の場合には、子どもに対する愛情に疑問がありますので面接交渉権が制限される可能性があります。
3.子どもや親権者または監護者に暴力をふるったり、その他の悪影響を及ぼすおそれがあるような場合には、面接交渉が認められません。
4.子どもが面接交渉を望んでいない場合は、その意思を慎重に調査して判断されることになります。
※子どもが思春期など精神的に非常に複雑な時期であって、別れて暮らす親と会うことによって、その精神状態が動揺することが考えられるような場合には、面接交渉が認められない可能性があります。
※片方の親が子どもに暴力を振るっており、もう一方の親が子どもを救うために子どもを連れて離婚したような場合は、面接交渉が認められないことが多いです。
※子どもを引き取って育てている親が再婚し、子どもとともに円満な生活が営まれ、分かれた親と会うことが子どもに逆に動揺を与えマイナスであると評価されれば、面接交渉が認められない可能性があります。
また、合意の内容は書面にする方がよいでしょう。具体的には、下記事項等について定める必要があります。
1.月に何回
2.何時間
3.何日
4.宿泊してよいのか
5.場所はどうするのか
6.日時は誰が決めるのか
7.電話や手紙のやりとりを認めるのか
8.誕生日などにプレゼントをできるのか
9.どんな会わせ方をするのか
10.子どもの学校行事へ参加できるのか
11.子供の意思を尊重するか、子どもの意思をどのように確認するのか子供の受け渡しの方法
12.面会の日時・方法等を変更する場合はどうするのか
13.面会に関する連絡方法はどうするのか
14.面会の日時・方法等について決まらない場合はどうすればよいか
話し合いで決まらなければ、家庭裁判所へ子の監護に関する処分として面接交渉の調停申立をします。調停が不成立であれば、手続きは移行して審判になります。
申立をする裁判所は、調停のときは相手方の住所地、審判の時は子どもの住所地の家庭裁判所です。
面接交渉を拒否された時(子どもを引きとっている母親に面接交渉を拒否された場合)などは家庭裁判所へ面接交渉の調停申立をします。調停が不成立であれば、手続は移行して審判になります。
ただし、面接交渉権は親であれば無制限に認められるという権利ではなく、子どもの福祉を害する場合や子どもの意思に反する場合には、制限される場合があります。
いったん認められた面接交渉も、子供に悪影響を与えたり、子どものためにならないと認められる場合には、停止される場合があります。
1) 面接交渉権否定説
2) 子の権利として認める見解(親の離婚後の子の福祉のために子に帰属する権利)
3) 自然権説(親子という身分関係から当然に発生する自然権・固有権とする)
4) 監護に関連する権利であるとする見解
5) 親権の一権能としての監護の一部であるとする見解
などがあります。
学説及び実務例からすると3)の親子という関係上当然に発生する権利であると把握するのが多いと思われますが、5)のように、親権の機能の一つとして把握する見解も学説上は有力であるといえます。
いずれにしても、面接交渉権の権利性およびその性質については、いまだ見解に一致が見られないものであって、その理解は困難な問題であるといえます。
実務家からすると、理屈はともかく、どのような内容の権利が認められるのかが重要になってきます。審判例などでは、面接交渉権に限界があるのは当然のことと判示したり、面接交渉権が全面的に制約される場合もあるなどとするものもあります。
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